「会計」と「ファイナンス」という言葉の違いを正しく理解できていますか?
会計とファイナンスを正しく理解することは事業をおこなっていく上で非常に重要なことです。しかし、これらの言葉の意味を正しく理解できていない人も多いかと思います。
そこで今回は、
- 会計とファイナンス、両者の違いとは?
- 会計とファイナンスの役目とその重要性とは?
これらについて徹底解説していきます。本稿で会計とファイナンスについて正しく理解し、企業経営に活かしていきましょう。
Contents
会計には2つの種類がある?管理会計と財務会計とは
会計とは日々の事業取引を帳簿などに記録することにより、経営状態などを数値化し経営者や外部の関係者(利害関係者)に報告することを意味します。
この会計は細かく区分すると「管理会計」と「財務会計」の2つの種類に分けられ、報告する相手によって種類が分かれています。
管理会計とは?
管理会計は企業内の経営者などに対して経営状態などを報告することを目的とした会計のこといいます。経営者は報告されたデータを元に経営分析などをおこない、今後の事業計画の策定や事業の見直しをおこなっていきます。
管理会計に誤りがあると経営方針や事業計画に大きな影響を及ぼす可能性が高いことから非常に重要な会計であるといえます。
財務会計とは?
財務会計は企業の外部の関係者(利害関係者)に対して経営状態などを報告することを目的とした会計のことをいいます。会社経営の場合は株主などの出資者から資金提供を受けることで事業をおこなっていきます。そのため、株主などの利害関係者に対して現在の経営状態を正しく報告する必要があります。
財務会計が関係するのは株主などの利害関係者だけではありません。金融機関から融資を受ける際にも財務会計は必要不可欠であるため、財務会計に誤りがあると企業の信用力低下を招きかねません。そのため、管理会計同様に企業にとって非常に重要な会計であるといえます。
ファイナンスとは一体何?3種類の意思決定について解説
ファイナンスとは日々の事業取引によって発生する現金(キャッシュ)の動きに注目し、事業資金の調達や資金の運用方法を考えていくことを意味します。
ファイナンスには経営をおこなっていく上での意思決定分野に関して非常に強い影響力を及ぼし、「資金調達」や「投資によるリスク・リターン」「利益の分配」などの意思決定をおこなうために非常に重要な役割を担っています。
資金調達の意思決定
ファイナンスは企業の資金調達における意思決定の際にも重要な役割を担っています。
資金調達の方法は大きく分けて「エクイティ・ファイナンス」と「デット・ファイナンス」の2つの種類があります。
- エクイティ・ファイナンス・・・株式などを発行することによって資金を調達する方法
- デット・ファイナンス・・・金融機関などからの借入や、社債を発行することによって資金を調達する方法
上記以外にも、ファクタリングやクラウドファンディングなど、資金調達の方法には様々な方法があります。それらの中から最適な資金調達の方法を見つけ、決定していくこともファイナンスの1つの役割です。
投資によるリスクとリターンの意思決定
投資をおこなう場合には必ずリスクがあり、その分リターンもあります。それらを踏まえたうえで、投資をおこなっていくのかどうかを決定していくこともファイナンスの重要な役割です。
事業を拡大する際には設備投資や企業や事業への投資など様々な投資をおこなう場合があります。企業投資には「事業買収」「株式譲渡・交換」「合併」「業務提携」など様々なスキームがあり、どの方法をとるかについては慎重に検討していかなければなりません。
さらに、投資をおこなう際には投資先となる企業の価値を正しく算定し、投資する価値のある企業なのかを調べていく必要もあります。このようにファイナンスは投資におけるリスクやリターンを考慮した意思決定においても大事な役割といえます。
分配の意思決定
事業資金を外部の株主などから調達している場合には、「配当」という形で株主などに利益を還元(分配)することがあります。この分配をおこなうのかどうかを決定していくのもファイナンスの役割です。
事業活動によって利益が出た場合には一般的に次のようなことがおこなわれます。
- 株主への分配
- 企業内でその分を蓄え今後の設備投資や万が一の時のために備える(内部留保)
ファイナンスでは事業活動によって得られた利益の処理方法について意思決定をおこなっていかなければなりません。そのため、「株主へ分配すること」と「内部留保とすること」のどちらが企業にとってプラスとなるのかについて慎重に検討する必要があります。
会計とファイナンスの違いは2つ
会計とファイナンスには企業内の利益やお金に関するという意味では同じですが、それぞれ重視するポイントが異なります。具体的には収益の捉え方や時間軸の捉え方に違いがあります。
会計とファイナンスの違い1.収益の捉え方に違いがある
会計とファイナンスでは「何を収益とするのか」という違いがあります。会計が重視するものは「事業利益」であり、ファイナンスが重視するものは「キャッシュ」です。
会計では、
「 事業活動によって発生した利益 」 = 「 収益 」
という認識をします。そのため、いくらお金が入ってこようとも、そのお金が金融機関からの借り入れである場合や株主からの出資などの場合、会計においては収益とはみなしません。あくまでも会計は事業活動によって得られた利益を収益とするため、お金が入ってきたかどうかは関係ありません。
それに対しファイナンスの場合は、
「 お金が入ってくる 」 = 「 収益 」
と認識します。そのため、金融機関からの借り入れや株主からの出資などによって得られたお金を収益とするため、事業活動によっていくらの利益が発生したのかは関係ありません。
会計とファイナンスの違い2.時間軸の捉え方に違いがある
会計とファイナンスではそれぞれ取り扱う時間軸にも違いがあります。
会計は事業活動によって得られた利益などを貸借対照表や損益計算書などの決算書に出力していくことです。そのため、会計では企業の「過去の実績」について取り扱われます。
それに対し、ファイナンスは現在の資金状況を踏まえ、今後の資金調達・投資・分配などをどのようにおこなっていくのについて意思決定をおこなうものです。そのため、ファイナンスでは企業の「将来のキャッシュ」について取り扱われます。
このように会計とファイナンスでは取り扱う時間軸が「過去」と「将来」となっており、事業をおこなっていく上ではどちらの時間軸も非常に重要であるといえます。
ファイナンスが重要な理由を理解しよう
事業をおこなっていく上で利益がいくらなのかというのは非常に重要です。しかし、利益はあくまでも事業活動による「結果」であり、これらの結果を出すためには「資金」が必要不可欠です。そのため、資金に関することを取り扱うファイナンスも非常に重要といえます。
「黒字倒産」という言葉をきいたことがある方も多いのではないでしょうか。
黒字倒産は利益が出ている状態(黒字)であるにもかかわらず、資金などが底をついた状態(資金ショート)となってしまうことにより企業が倒産してしまうことをいいます。
こういった事例が多いことからも近年ではファイナンスに対して非常に注目が集まっています。
事業をおこなう上で利益を出すことはもちろん重要ですが、そのために「資金をどのように調達し」、「どのように運用していくか」という意思決定についても非常に重要であるといえるのではないでしょうか。
まとめ
企業にとっては会計とファイナンスは切っても切れない関係にあります。
事業は資金調達から始まり、その資金を元に事業活動をおこなっていきます。事業活動は会計によって数値化され、ファイナンスの意思決定の判断材料となります。このように企業では会計とファイナンスを繰り返すことで日々成長していきます。
日々の会計を正しくおこない、ファイナンスによる正しい意思決定に役立て企業を成長させていきましょう。