2020年6月19日、内閣府・法務省・経済産業省から合同で「押印についてのQ&A」という文書が公表されました。
新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの企業で突如リモートワークの導入が加速。経理を含む管理部門は「リモートワークが導入しやすい部署だ」といわれていました。しかし、実際にフタをあけてみると、リモートワーク期間中でも経理担当者の約半数は押印のために週に何度か出社をしていることが日本CFO協会の調査で分かりました。
急激に広がるリモートワークをきっかけに、日本の「ハンコ」の商習慣について活発に議論が行なわれはじめました。そして6月19日、政府から押印についてQ&Aが公表されたのです。
この記事では、政府が公表したQ&Aについてのポイントをお伝えします。
そもそも請求書や契約書に押印は必須ではなかった
法的には請求書や契約書に「企業の印鑑が必要ない」ことを知っている人は多くありません。
書類に押印がなければ、正式な書類とは認められないのでは?と思われる方も多いでしょう。しかし、本当に印鑑が必要な書類はそう多くないのです。そもそも、基本的に押印には法的効力がないのです。(ただし、例外はあります)
ではなぜ、法的に必須ではない押印が商習慣になっているのでしょうか。それは、社内のルールと、承認者が「この書類を承認しました」という意志表示・記録のために押印という形式をとっているのです。
ではハンコの役割とは
たとえば請求書を例にあげてみましょう。「請求」をする場合、必ず書面である必要はなく、口約束でも可能です。
しかし、多くの取引の場合、請求書にはハンコが押されています。これは、トラブルを避けることが一番の目的です。押印のない請求書だと誰でも作成することができます。一方で押印は何もない請求書に比べ、その企業が請求書を発行したという信頼度が高まります。
そのため、企業によっては請求書にハンコがなければ受け付けないということも。
ハンコの慣習が変わりはじめた
冒頭でもお伝えした通り、急激なリモートワークの広がりによって、日本のハンコの慣習について議論されるようになりました。ここへきて、実はハンコが必須ではないことを知った方も多いのではないでしょうか。
このような議論の広がりを受け、政府からQ&Aが出されたのです。
メールの履歴などがあれば問題ない
とはいえ、印鑑以外の方法でどのように商取引の証拠を残すの?と思う方もいらっしゃるでしょう。今回発表された「押印についてのQ&A」では、この疑問にも踏み込んで答えてくれています。
電子証明書はもちろん、メールでも商取引の証拠となるのです。
取引先とのメールのメールアドレス・本文及び日時等、送受 信記録の保存(請求書、納品書、検収書、領収書、確認書等 は、このような方法の保存のみでも、文書の成立の真正が認 められる重要な一事情になり得ると考えられる。)
引用:内閣府・法務省・経済産業省「押印についてのQ&A」
また、この文書では、CCに複数の担当者を入れたり、メールに添付されているPDFごと保存するなど、いますぐ実行できる実務的な方法も記載されています。
押印不要は、経理がリモートワークしやすくなる大きな一歩に
アドビシステムズ株式会社が2020年3月に行なった調査によると、「紙書類の確認や押印でやむなく出社」したビジネスパーソンは500人中64.2%でした。(参照:アドビ「テレワーク勤務のメリットや課題に関する調査結果」を発表)
今回発表されたQ&Aは、少なくとも押印のために出社することがなくなるよう、社内の体制を整えるよいきっかけになるのではないでしょうか。