2018年は「副業元年」と言われ、「働き方改革」の一環として政府もガイドラインを策定して副業解禁を後押ししました。
2019年には、大手企業も続々と副業を認める動きが出ました。今後幅広い業種・業態へと拡大していくと見られていました。
そうして迎えた2020年、全世界を震撼させた新型コロナウィルスが流行しました。
世界中の人が自粛で、家から出ることすら制限されました。
日常の人々の動きも変わりテレワークも推進され、今まで副業など、自分には関係ないと思っていた人たちも働き方を見つめ直さないといけない状況下に直面しました。
人に雇われるだけの働き方は終わったのです。
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大手企業がこぞって副業解禁
2018年の『日本経済新聞』でも、次のように報道されています。
「大副業時代の幕開け 政府・企業が後押し」 (2018年5月6日付『日本経済新聞』電子版)
企業などで副業を認める動きが広がり始めた。趣味で培った技能を副業で発揮したり、副業で得た人脈を本業に生かしたり。政府もガイドラインを策定して副業解禁を後押しする。日本でも幕を開けた「大副業時代」の実態を探った。(中略)
後押ししたのは厚生労働省の方針転換だ。1月に「副業・兼業の促進に関するガイド
ライン」を作成。副業の壁だったモデル就業規則の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除し、「原則的に副業を認めるべきだ」と副業解禁にかじを切った。「働き方改革」の一環で、個人には様々な知識・スキル獲得や副収入など、企業には人材の有効活用や社員の底上げといったメリットがある。
厚労省は「IT企業などから副業を認めないと優秀な人材が集まらないという危機感を訴える声が聞かれた。『原則、勤務時間以外の自由行動を制限できない』という判例もあり、企業にもう一度、労働者との関係を考え直してもらいたいと考えた」(労働基 準局労働関係法課)と説明する。
2018年にはすでに、ソフトバンクグループ、新生銀行、ユニ・チャーム、ロート製薬、コニカミノルタ、ソニー、花王、三菱自動車といった大企業でも副業を認め始めており、今後幅広い業種・業態へと拡大していくと見られています。
定年まで正社員で働ける人はごく一部
今現在の日本社会は「少子高齢化社会」です。
国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口」(2017年)によると、
2015年時点で1億2700万人いた日本の人口は、
今の若者が高齢者となる
2063年には9000万人を下回り、
さらに100年後の2115年には5060万人まで激減すると試算されています。
それほど遠い将来の話でなくても、
2024年には3人に1人が 65歳以上という「超々高齢化社会」が訪れようとしています。
政治経済や外交問題に関する未来予測というのは、必ずしも当たるものではありません。
ただし、少なくとも人口予測に関しては極めて高い精度で的中します。
自身と日本社会の将来を考えるうえで、〝人口減少”と〝高齢化”は大前提となるのです。
これは、かつて当たり前だったはずの“昭和型キャリアプラン”が、終焉を迎えようとしていることを意味します。
経済産業省の試算によると
「正社員になり定年まで勤めあげる」という生き方をする人は、
1950年代生まれでは、34%だったのに対し、
1980年代生まれでは、27%。
「結婚して、出産して、添い遂げる」という生き方をする人は
1950年代生まれでは、81%いたのに対し、
1980年代生まれでは、58%にとどまります。
(次官・若手プロジェクト「不安な個人、立ちすくむ国家」平成 年5月)
「夫は定年まで正社員」
「妻は子持ちの専業主婦で、一生、夫に添い遂げる」
という昭和のモデルケースのような家庭は、もはやごく一部の富裕層に限られると言っていいでしょう。
多くの人が、思ったよりも長く生きる
定年年齢も段階的に引き上げられており、
1980年代前半までは、55歳が一般的でしたが、
1986年に高年齢者雇用安定法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)が制定されると、
60歳定年が努力義務に。
2000年の改正法では 65歳定年が努力義務となり、
2012年改正法で完全に義務化されました。
「人生100年時代」と言われるなか、健康な人であれば、
80歳ぐらいまで働き続けるのが当たり前になるはずです。
政府が定年を延長したがる理由は、
言うまでもなく公的年金の受給開始年齢を引き上げるためです。
年金を含めた社会保障にかかる費用は、
2011年度は約108兆円だったのに対し、
2025年度は約150兆円まで増大すると見られています(厚生労働省、2012年推計)。
およそ1・5倍です。
日本政府はすでに莫大な借金をしているのに、これ以上の財政支出は不可能です。
このままでは、年金制度は破綻してしまうのです。
今の40代が高齢者になって年金を受け取れるのは、
75歳か80歳になってから、なんてことになりかねません。
しかも、給付額が大幅に減るのは間違いありません。
現在の医療費の自己負担割合は
6~70歳が3割、
70~74歳が2割、
75歳以上が1割 ( 70歳以上でも現役並み所得者は3割負担)となっています。
いつまでも高齢者を優遇し続けることは、財政上不可能です。
2019年10月には消費税が10%に増税されましたが、まだ足りません。
2017年の日本人の平均寿命は女性が 87.26 歳、
男性が 81.09歳(厚生労働省「平成30年簡易生命表」)で、
平均寿命はさらに伸びる可能性が高いのです。
平均寿命とは、その年に生まれた赤ちゃんがその後何年生きるか推計したもので、たとえば、2017年生まれの女性なら平均87.26 歳まで生きるということです。
一方、ある年齢の人が、この先何年生きるかを推計したものは「平均余命」と言います。
たとえば、2017年に65歳の女性なら、平均余命は24.43年(前出の簡易生命表) なので、
89.43歳まで生きることになります。
つまり2017年において、
0歳の女性の平均寿命は 87.26 歳でも、
65歳の女性は89.43歳まで生きるということです。
自分が何歳まで生きるかを考えるときは、
平均寿命ではなく平均余命で考えなくてはなりません。
平均余命で考えると、
男性は90~100歳、
女性は100~100歳超まで人生は続く可能性が高いと思ったほうがいいでしょう。
今の 40代が将来「貧困老人」になるケースも
仮に75歳まで定年が延長されたとしても、「人生100年時代」を前提とするなら、さらに20年以上は年金をベースに自活しなくてはなりません。
夫がサラリーマンで妻が専業主婦の場合、老人夫婦世帯の年金受給額は、現在は約22万円ですが、今後確実に受給額は下がっていくでしょう。
要するに、年金はほとんどアテにできないし、受け取るとしてもせいぜい5万~10万円程度という覚悟が必要です。
ゆとりある老後生活を送るためには、毎月38万円ほど必要と言われます。
しかし、年を取れば大きな病気をする可能性も高まりますし、老人ホームに入居するとなれば、入居一時金だけで1000万円、毎月の居住費を含む生活費が 20万~30万円かかりますから、38万円というのは決して贅沢できる金額ではなく、現役時代と同程度の生活水準を維持するために必要な金額になります。
少なく見積もっても、夫婦2人で毎月最低25万円ぐらいは必要ですが、これは年間にすると300万円。老後が20年間はあるとすると、6000万円は必要になります。
これだけの額を確保できる人は、
サラリーマンではごく一部のアッパー層に限られるでしょうし、そういった人たちでも、現在の給与水準が退職するまで維持できる保証はまったくありません。
「時間外労働の上限規制」の本当の目的は、人件費削減
こうした動きに追い討ちをかけるように、政府は労働基準法を改正し、「時間外労働の上限規制」を打ち出しました。
これまで残業時間は「月45時間、年360時間まで」とされていましたが、
法的強制力はなく、青天井でいくらでも残業することが可能でした。
そこで今回の改正法では、法律により上限を設けたのです。
大企業では2019年4月、中小企業では2020年4月から適用(特例あり)され、時間外労働は確実に減ります。
これはすなわち、企業側がこれまでのように無制限に残業した分の残業代を払うことができなくなった、ということを意味しています。
残業時間の短縮化に伴い、実質的に給与が削減される人も出てきます。会社に所属していれば将来は安泰、という時代は、もう終わりを迎えているのです。
そして、時代は今ウィズコロナ時代に突入です。
旅行業、イベント業、飲食業など、商売あがったりの状況下の企業も多くあります。
テレワーク、リモートワークで週5日、事務所に出なくても仕事が出来るとわかった職種もありますし、逆に働き方だけでなく仕事自体を見直しすることになっている職種もあるでしょう。
企業自体が人を雇用する体力すらなくなってしまい、時間外労働だけでなく、通常業務すら減らされている職種も実際はあります。
時間外労働の上限規制は、表向きは働き方改革ということで、過度な残業はやめましょうということですが、企業や経営者の立場から代弁すれば、その本当の目的は人件費の削減です。
サラリーマンだと、「あと1時間残業すれば、2000円残業代増えるな」という考えは、どうしてもありますよね。でも、経営者としては、そういうことはもうやめさせたいわけです。
今はまだ、月3万円とか5万円ぐらい残業代を付けて、それで手取りがやっと25万~30万円という人は、決して珍しくないでしょう。
でも、その残業代がなくなって手取りが 20万円少々となると、かなり「ヤバい」状況です。
17万円を貯金する余裕なんか、もうとてもありません。
お金だけではない副業のメリット
「死ぬまで働く」と言うと、苦役が死ぬまで続くかのように捉える人もいますが、そういう人はぜひ、考え方を変えてみてください。
たとえば、ニトリホールディングス会長の似鳥昭雄氏は1944年生まれで70歳を過ぎていますが、今なお第一線でグループをリードしています。
セブン&アイ・ホールディングスを長く率いてきた鈴木敏文氏は1932年生まれで80歳を過ぎていますが、現在は名誉顧問として仕事を続けています。
両氏とも、その年齢には見えないぐらい若々しく、エネルギーに満ちあふれています。
実際、経営者に限らず、スーパーの店員さん、タクシーの運転手さん、農業や漁業をしている方々など、ごく普通の仕事であっても、働き続けている人は健康的、若々しさを保っています。
逆に、退職した途端に家に引きこもって、運動もせずテレビばかり見ていて、あっという間に老け込んでしまったり、病気になってしまったりという人は、いくらでもいます。
健康で長生きするためにも、適度に働き続けたほうが絶対に良いのです。
会社だけの人間関係ではなく、趣味や副業など多様なコミュニティを持つことが、より豊かな人生につながります。
副業に対して、経営者側はまだ抵抗感が根強いですが、副業をすることは単に副収入を得るだけでなく、世の中のニーズを知り、自分自身の適性を再発見することにもつながります。
新たな領域に挑戦することで、社外の人から意外な評価を得られることもあります。
つまり、副業をすることによって本業も伸びるというケースが少なくないのです。
まとめ
国内の新型コロナは収束に向かいつつあるように見えます。
しかし、最近また伸びてきた感染者。
日本でも第2波、第3波、は“あって当たり前”と考えるべきです。
こうした状況下での「働き方」の視点で考える個人の防衛策としてできることは何でしょうか。新型コロナで雇用を脅かされる人が増える今、かつてないほど副業熱が高まっています。
今回のコロナショックで、本業の脆さが露呈されました。ここまで大きな社会変化が起きて、安泰だと思っていた会社が簡単に傾く、ということにみんなが気がつきました。
『何かをしなければ』という危機感から副業する人が確実に増えています。
今まで副業には見向きもしなかった人たちが、完全終息がいつなのかわからないなかで、収入源を増やしてリスクヘッジし、会社やマーケットに左右されない働き方を求めるのは自然な流れです。
個人が自身のスキルを売買できるスキルマーケット「ココナラ」では、自粛期間をきっかけに2020年5月は月次の登録者数が前年同月比で2倍以上に急増しました。
仕事が休みになって在宅時間を有効活用しようという新規登録者だけでなく、休眠していたユーザーが復活したり、従来のアクティブユーザーも販売枠を増やすなど、サイト全体で売買が活発になり、自粛期間中に登録者が急増したと聞きます。
在宅勤務は副業のチャンスです。
テレワークだからとネットフリックス三昧もいいけれど、ただ指をくわえて次の波を待っているだけなのでは、次の大波にのみ込まれてしまいます。
ここで自ら動くのと動かないのとでは、差がつくのも明らかです。
自分の身は自分で守りましょう。
先に動きだした人たちの戦略を知り、ウィズコロナ時代でも波に乗って生き抜いて欲しいと思います。