経費精算についてのルールをつくりたいけれど、
「どのようなルールを決めればよいのかわからない」
「経費精算のルール作成時にポイントはあるの?
と悩んでいる人は多いのではないでしょうか。
経費精算のルールを作成するときのポイントは、「それぞれの経費の特徴を抑えておくこと」です。
適切な経費の精算ルールがなければ、
- 経費のムダ遣いが増えてしまう
- 経費の横領などをおこなう人がでてくる
などといった社内トラブルが起きる可能性があります。
そこで今回は、ルールを作成する際の注意点を勘定科目別にまとめていますので、経費精算のルールをまだ作成していない企業はぜひ参考にしてみてください。
Contents
旅費交通費に関するルールづくりのポイント
企業では日々出張などによって旅費交通費が発生する場合が多く見受けられます。そのため、領収書などの証拠書類の保存などを従業員へしっかりと周知していなければ、正しい経費精算をおこなうことができません。また、場合によっては領収書などがもらえない場合もあるため、そのような場面を想定してルールを決めておく必要があります。
公共交通機関(電車・バスなど)を利用した場合のポイント
電車・バスなどの公共交通機関による交通費を経費精算する際のポイントは、次のケースを想定してルールを作成することです。
- 利用したときに基本的に領収書が発行されない。
- 定期の区間内で通勤費と二重に経費を計上するおそれがある。
これらのポイントをふまえて、正しく経費精算するためには、経費精算書に必要な事項を正しく明記することです。これは、消費税法で定められている書類の保存要件を満たすためでもあり、書類の保存要件を守らなければ、消費税の納税負担額が増えてしまう可能性があるためです。具体的に次の事項を経費精算書に明記しておくとよいでしょう。
- 申請年月日
- 申請者名
- 支出年月日
- 目的および行先
- 利用機関
- 利用区間
- 利用金額
さらに利用区間を確認することで、定期の範囲と重複していないかをチェックすることも可能になります。
飛行機を利用した場合のポイント
飛行機による交通費を経費精算する際のポイントは、実際に飛行機を利用していることを証明するルールを作ることです。このルールは、「カラ出張」を防ぐ目的で必要です。
具体的に飛行機を利用した証明方法としては次の2点があります。
- 搭乗証明書を提出してもらう。
- 出張先での領収書などを一緒に提出してもらう。
搭乗証明書は、基本的に航空会社のウェブサイトで発行されます。また、出張先での領収書なども出張先に滞在した証明となるため十分な証明書類となります。
飛行機による出張の際には、一旦航空券を購入し、領収書の発行を受けたあとに航空券を払い戻しを受けることができてしまうため、横領の手口に使われる可能性があります。横領が起きてしまうと、企業の管理体制の甘さを理由に社会的信用を失いかねないため、問題を発生させないためのルール作りを徹底する必要があります。
タクシーを利用した場合のポイント
経費精算のルールを作成するうえで、タクシー代についての注意点は、次の2点です。
- 公共交通機関などを優先的に利用するルールにする。
- 通常の移動目的と接待時の移動目的を区分する。
タクシー代は、公共交通機関などと比較して金額が高額になります。出張先で電車やバスなどが走っておらず、
- タクシーを利用せざるをえない場合
- 緊急時でタクシーを利用せざるをえない場合
など利用できるケースを決めておくと、経費の無駄遣いを防ぐことができます。
また、タクシーは接待時の利用も考えられます。接待時にタクシーを利用した場合における経理処理は、「旅費交通費」ではなく、「接待交際費」に該当し、税法上の取扱いも異なるため、区分しておくことが必要です。
車を利用した場合のポイント
車を利用した際の経費精算のポイントは、次の3点です。
- 自家用車を利用したときのガソリン代は、走行距離に応じて精算する。
- 社用車を利用したときのガソリン代は、全額経費となる。
- 利用目的や移動区間を明記しておく。
自家用車を利用した場合は、ガソリン代は走行距離に応じて精算します。この精算金額を計算するためには、経費精算書に
- 移動区間
- 距離
これらの記載が必要です。また、社用車を利用した際に発生するガソリン代は全額経費として精算することができます。
ただし、社用車の私的利用は、経費の横領と同じですので、これを防ぐためにも、経費精算書に利用目的や移動区間は、記載しておく必要があります。
出張・旅費に関するルールづくりのポイント
出張時には交通費などだけではなく、ホテルの宿泊代や食事代などが発生する場合もあります。そういった場合における経費精算のルールも適切につくっておかなければ社内トラブルの原因となってしまうため、注意が必要です。
出張の定義とは
出張時に発生する経費精算ルールを作る際は「どこからが出張に該当するのか」を決めなければいけません。出張の定義は、企業により異なりますので、それぞれの特徴に合った定義にしておくことが重要です。具体的な出張に関する定義の例は、次のとおりです。
- 片道〇〇km以上の移動を必要とする場合は出張に該当する。
- 通常の勤務地を離れ、宿泊を要する場合は出張に該当する。
宿泊をともなう旅費精算のポイント
宿泊のルール作成のポイントは、宿泊金額の上限を決めておくことです。これにより、経費の無駄遣いを防ぐことができます。一般的には、役職別に宿泊費の上限金額を定めている場合が多いです。
たとえば、次のように
- 役職
- 平日または、土日祝日
などのように区分して上限金額を決めておきます。
役職 | 宿泊費(平日) | 宿泊費(土日祝前日) |
取締役 | 〇〇円 | 〇〇円 |
部長 | 〇〇円 | 〇〇円 |
一般 | 〇〇円 | 〇〇円 |
また、大型連休中には、宿泊費が高騰する場合があり、宿泊費の上限を超えてしまうおそれがあります。こういった場合にも対応することができるように工夫しておくと、経費精算の際に悩むことがありません。
食事をともなう旅費精算のポイント
食事代に関しては、相手が取引先などでなければ、経費として認められなません。これは、出張の有無にかかわらず、食事代は生活を行ううえで必要最低限の支出であるため、個人が負担すべきであると考えるからです。
とはいえ、出張先では自炊も困難であり、食事代の負担が増えることも考えられます。この問題を解消する方法として、経費精算のルールに日当の支給を盛り込む方法があります。
この方法では、ルールに基づき日当の支給をおこない、支給を受けた従業員は日当を食事代に充てることができます。この点に関しては経理上、なにも問題はないため、出張先での食事代による金銭負担を軽減させるのに有効です。
出張申請のルールを決めておく
出張のなかには、長期間におよぶ場合があり、経費精算の金額も高額になることもあります。ミスなく、スムーズに手続きを進めるためには出張申請のルールを決めておかなければいけません。決めておくべき点は主に次の4点です。
- 申請期日
- 経費の精算方法
- 出張旅費の仮払いの有無
- 提出書類
まず、申請期日は申請手続きが後回しにならないために必要です。次に、経費の精算方法として、申請後に
- いつまでに
- どのような形で
精算するのかを決めておくことで、精算までの流れを従業員と共有することができます。
また、出張の際に従業員が一時的に旅費を立て替えて支払うケースもあります。その場合には、仮払いを導入し、仮払い金額の計算方法などもルールで決めておく必要があります。
交際費に関するルールづくりのポイント
交際費は取引先との信頼関係を築くうえで、必要不可欠な経費の1つです。しかし、その反面、費用に対する効果が見込みづらい経費の1つでもあります。そのため、交際費に関しても一定のルールを設けておかなければ、経費の無駄遣いにつながってしまいます。
上限金額を決めておく
交際費は経費の無駄遣いの原因となりやすい経費です。また、交際費は、法人税法上、経費として認められない部分が出てくるため、節税できずに金銭支出だけが多くなってしまう可能性もあります。適切な限度額を設けておくことで節税しつつ、不要な経費の支出を防ぐことができます。
報告書に記載する事項を決めておく(詳細に記載してもらう)
法人税法上では、接待飲食費の参加者一人あたりの金額に応じて、取り扱いが異なります。具体的には、次のとおりです。
- 1人あたり5,000円以下の場合 → 全額経費
- 1人あたり5,000円以上の場合 → 50%経費(注)
(注)中小企業(期末の資本金が1億円以下の法人)の場合には、年間800万円までの交際費であれば、全額経費にすることができます。
一人あたりの飲食代金が5,000円以下であることを証明し、全額経費にするためには、報告書などに次の必要事項を記載しておかなければいけません。
- 飲食などのあった年月日
- 飲食等に参加した企業名・氏名及びその関係(例:販売先、仕入先)
- 飲食などに参加した人の人数
- 飲食代として支払った金額
- 飲食店の住所、店舗名
報告書に漏れなく記載しやすいように、報告書のフォーマットを工夫しておくことも大切です。
まとめ
経費精算のルールを作る場合には、勘定科目ごとにそれぞれの特徴を理解しておくことが重要です。経費精算のルールを適切に作成することで、不要な経費の支出を防ぎ、企業の業績を伸ばすことができます
また、不要な経費の支出を防ぐことは、企業の資金繰りの悪化を防止する効果も見込むことができるため、定期的にルールの内容を見直しながら、その都度、最適なルールを作る必要があります。経費精算のルールがない企業はこれを機会に、経費精算ルールを作ってみてはいかがでしょうか。