仮想通貨の取引で得た売買損益は雑所得に分類されます。
現在の仮想通貨の税制の動き
暗号資産取引業界の自主規制団体である日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)と日本暗号資産取引業協会(JVCEA)が、2021年度税制改正に向け、暗号資産取引で得た利益への課税を20%の申告分離課税とすることなどを盛り込んだ要望書をまとめたそうです。
暗号資産取引による所得は「雑所得」のため損益通算はできず、税率も最大55%。これを株式取引やFX(外国為替証拠金取引)と同じように、申告分離課税の適用、税率は20%、損益通算可にして欲しいというのが要望の主旨です。
2019年7月、藤巻議員が国会で「仮想通貨(暗号資産)の税制改正を」と訴えましたが、スルーされました。
「FXが総合課税→分離課税」の背景をなぞる感じになるのかな…と思っています。
でも暗号資産に対してなぜ厳しいのかが分かりません。ボラティリティの高さでしょうか。
ポラティリティとは…
証券などの価格の変動性のこと。期待収益率が期待通りとなる度合いを示す。ボラティリティが高ければ期待収益率から大きく外れる可能性が高い。
標準偏差で示すことが多い。ボラティリティが大きいとは価格の変動性が大きいことを指す。また、1つの変数の変動に対する他の変数の感応性を意味することもある。例えば、長期債の利回りの変動に対する価格の変動性は、短期債のそれよりも高く、ボラティリティが大きいという。野村證券 証券用語解説集よりhttps://www.nomura.co.jp/terms/japan/ho/volatility.html
そんな難しいことはさておき、雑所得とは何でしょうか?
雑所得とは?
国税庁のホームページで「雑所得」は、以下のように定義されてます。
雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも当たらない所得をいい、例えば、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が該当します。
所得は10種類に分類されていて、会社から支払われる給与は「給与所得」、
事業から得られる収入は「事業所得」、
預貯金の利子は「利子所得」です。
「どの所得にも当てはまらない所得」は雑所得になります。
たとえば、文筆業以外の人が、原稿料を受け取った場合には雑所得です。
雑所得も事業所得も、収入から必要経費を引いて計算できる点では同じです。
事業所得は、給与所得との「損益通算」が可能なため、副業で赤字が出た場合は、所得税などの税負担を抑えられる点が異なります。
税務署では、副収入が雑所得と事業所得か、実情に合わせて判断しています。
ネットオークションやフリマで得た収入は、基本的には雑所得です。
売上から仕入れや経費を除いた所得が20万円を超えると、確定申告が必要です。
ネットオークションやフリマなどで販売したものが、洋服や食器、家具といった自宅にあった不用品の場合には、「生活用動産」として、所得が20万円を超えても確定申告は不要です。
総合課税とは、課税対象となる所得と給与所得などの他の所得との合計額に所得税率をかけて計算し、確定申告が必要となる税制です。税率は課税所得に応じて5%から45%までの7段階に分かれています(住民税は一律10%)。
では、実際に仮想通貨の取引で得られる雑所得はどのように計算するのでしょうか。雑所得は総合課税の対象となり、給与所得などの他の収入と合計額で税率が決まります。
なお、所得税は累進課税(収入に応じて課税率が上がる)で、最大45%の税率が設定されています。利益が大きければ、累進課税で所得税率は最大45%まで上がり、住民税10%との合計税率は最大55%になります。給与所得にかかる税率まで上がる可能性もあります。
<所得税の速算表>
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
引用元:国税庁 No.2260 所得税の税率
FXもずっと総合課税だった過去がある
今でこそ申告分離課税となったFXですが、最初からそうだったわけではありません。
1998年に外為法(外国為替及び外国貿易法)が改正され、FXが解禁された当時は「総合課税」でした。この時は、課税所得金額(給与所得等と合算)が195万円以下なら10%、195万円超330万円以下なら20%だが、330万円を超えると30%となり、額に応じて税率も上昇します。
最大で1,800万円超の場合、50%もの税率がかけられていました。
その後、2005年に金融先物取引法(当時)が改正され、“取引所取引”でのみ申告分離課税が認められるようになりました。
それでも“店頭取引”はまだ総合課税だったのです。
ようやく2011年にまとめられた税制改正で、申告分離課税が認められるようになりました。
2012年1月のことです。
今は、所得額の大小にかかわらず、税率は一律20%となっています。
FX(取引所取引)の分離課税が認められたのは、FXが生まれて10年以上たってからです。
店頭取引が分離課税になったのは、取引所取引が認められてからさらに7年経ってからです。
暗号資産にそれが認められるには、まだ年月がかかるのでしょうか?
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