「行政手続きでの押印見直しへ コロナ対策、首相が指示」(共同通信)
このような見出しが連日、インターネットのニュースを賑わせています。
感染症が拡大する中、テレワークをはじめたものの、週に何度かは押印のために出社しなければならない経理財務担当者が約半数近くいることが、日本CFO協会の調査でわかっています。
この記事では、経理財務職のテレワークを阻む押印・紙書類について解説するとともに、企業が印鑑をなくすときに起こる課題についてもお伝えします。
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テレワークができない理由の1位に「押印業務・紙データ処理」
日本CFO協会が「新型コロナウイルスによる経理財務業務への影響に関する調査」を実施したところ、テレワーク中の約4割の企業で、テレワーク中に出社しなければならなかったというデータが公開されました。
出社の理由は「請求書や押印手続き、印刷など紙データの処理」が1位。
経理・財務関連職は営業などのフロント業務に比べて、テレワークがしやすい業務だといわれてきました。しかし、ここへきて押印や紙文化のしぶとさが、企業のテレワークを妨げていることがわかりました。
参照:日本CFO協会「新型コロナウイルスによる日本企業の 経理財務業務への影響」についての調査結果と考察を発表 」
そもそも印鑑の役割とは
実は請求書に「企業の印鑑が必要ない」ことを知っている人は多くありません。
書類に押印がなければ、正式な書類とは認められないのでは?とおどろかれる方もいらっしゃるでしょう。しかし、本当に印鑑が必要な書類はそう多くないのです。そもそも、基本的に押印には法的効力がないのです。(ただし、例外はあります)
ではなぜ、多くの書類に押印が必要なのでしょうか。それは、社内のルールと、承認者が「この書類を承認しました」という意志表示・記録のために押印という形式をとっていることが多いのです。
押印は商習慣
日本では、契約書を交わす場合、紙の契約書を作成・押印し、その契約書を持参もしくは郵送するのが一般的です。
しかし、押印は信頼を担保するための形式上の仕組みであり、電子署名でも問題ないのです。
この商習慣が変われば、ウェブ上で契約の進捗管理・締結が可能です。
2020年6月19日、内閣府・法務省・経済産業省から合同で「押印についてのQ&A」という文書が公表されました。
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社内で押印が形骸化していませんか?
押印が根強くのこる企業では「会社のルールだから」と印鑑を押している人も少なくありません。その様子は、まるでスタンプラリーのようだといわれることもあります。
確認や承認の意味をもつ印鑑ですが、社内回覧・書類のチェック・支払い一覧のチェック・給与明細など、仕事の手を止めて押印する作業を手間だと感じている人も多いのではないでしょうか。
また、何人もの印鑑が必要な承認プロセスは、多くの時間と労力が必要となります。そのため、業務が非効率化しやすくなり、生産性向上の妨げになる可能性があるのです。
企業から押印をなくす上での課題
ここからは企業の業務フローから押印をなくそうと思うときに起こる、よくある課題についてお伝えします。
クライアントが了承してくれるか
請求書・納品書などの印鑑は電子化されたものでも問題なく取引できても、契約書の電子化には慎重になる企業が存在します。
クライアントが契約書の電子化に合意してくれなければ、契約を成立させることはできません。ではなぜ、クライアントが契約書の電子化に二の足を踏むのでしょうか。その理由は2つ考えられます。
まず1つ目は、電子契約書にコストがかかりそうだと思っている場合があること。この場合は、たとえばクラウドサインなどのようなプラットフォーム事業者へ契約書送信者が費用を支払っていて、契約書受信者にはコストがかからないようになっています。
コスト面に不安があるクライアントであれば、コストがかからないことを丁寧に説明することで契約の電子化に了承してもらえるでしょう。
2つ目は、電子契約書で交わされた契約書についての判例がまだないことです。判例がなければ、クライアントがこれまで通り印鑑をもらっておいた方が安心だと思ってしまっても無理はありません。この点が電子契約書を進める上で、大きなネックになっています。
セキュリティ問題にどう対応するか
電子契約とは、電子データに電子証明書で電子署名をすることで、書面による契約と同等の証憑類となると認められているものです。しかし、データは改ざんできるというリスクがあります。
そこで、セキュリティ対策として登場したのが「タイムスタンプ」です。
総務省から公開されているタイムスタンプの説明は以下の通りです。
ある時刻にその電子データが存在していたことと、それ以降改ざんされていないことを証明する技術。タイムスタンプに記載されている情報とオリジナルの電子データから得られる情報を比較することで、タイムスタンプに付された時刻から改ざんされていないことを確実かつ簡単に確認することができます。
タイムスタンプは、電子署名をした時点以降、変更がされていないという証拠になります。電子契約をする場合には、タイムスタンプを導入しておくと、セキュリティ面で安心です。
アフターコロナを見据えて「いま」変わろう
コロナをきっかけに、企業間取引や働き方・サービスが変化しました。
「本格的に社内の仕組みを変えるのは、世間が落ち着いてからにしよう」ではなく、いま、できることから始めるのが大切ではないでしょうか。
さまざまなサービスを使えば、経理財務担当者がリモート業務中に出社しなければならない事態を限りなく減らせるはずです。
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