こんな質問をいただきました。
『長年勤めたベテランの社員が70歳になり退職します。
そこで新たに1人採用することにしました。
人員増員は数年ぶりで、うちの社員は協調性があり、チームワークの良さが自慢ですが、新たに入社する社員が既存社員に上手く溶け込めるかが不安。
新入社員の入社後3ヶ月の試用期間は、期間の定めがある雇用契約として
その期間の勤務状況をみて正式採用するかを決めようと思うのですが、問題はないですか?』
試用期間とは?
試用期間とは、長期雇用を前提として、適性や能力を判断するために一定の期間を設ける、その期間のことです。
試用期間は、「解約権留保付き労働契約」と定義されています。
従業員の能力・適性の有無により本採用するかしないかを判断する自由が会社に与えられているということ。
留保解約権に基づく解雇は、通常の解雇よりも広い範囲において解雇の自由が認められています。
試用期間の目的に照らし合わせて、客観的に合理的な理由があって、社会的に相当であることが必要条件です。
有期雇用契約とは?
有期雇用契約は、業務が一定の期間のみという前提の雇用契約なので、
試用期間とは前提が大きく異なります。
有期雇用契約を締結する際は、契約期間満了後に契約を更新するか否か、一定の条件により契約を更新すると明示します。
契約期間途中の解雇は止む得ない場合に限られていて、期間の定めのない雇用契約の場合より条件は厳しいとされています。
試用期間を有期雇用契約とする場合の注意点
試用期間は長期契約を前提としたものです。
入社後数ヶ月を使用期間と決めていても、入社日から正社員であり、試用期間中や試用期間満了時に本採用拒否を行うのは解雇にあたります。
企業によっては、試用期間を有期雇用契約として契約を締結するケースがあります。
有期雇用契約期間中に勤務状況や能力等をみて、問題がなければ正社員として本採用としますが、適格性に欠けるとした場合は、期間満了で雇用を終了させるというものです。
この方法について、判例では、会社が従業員の新規採用にあたり、雇用契約に期間を設けた趣旨・目的が従業員の適性を評価・判断するためのものである場合は、期間満了により雇用契約が当然に終了する明確な合意が当事者の間で成立しているなどの、認められている場合を除き、設けられた期間は契約の存続期間ではなく、試用期間と解するべきとされています。
たとえ形式上、有期雇用契約を締結していたとしても、それが従業員の適性を判断するのが目的なのであれば、期間の定めのない雇用契約とみなされ、
有期雇用契約の期間は試用期間に該当するということになります。
このケースに該当するとなると、期間満了で雇用を終了させる場合、期間満了という理由だけでは雇用契約を終了させることはできなくなります。
まとめ
期間満了で雇用契約を終了させる、いわゆる雇止めは、
有期期間契約を締結する際に、正社員採用が前提の雇用契約ではないということを従業員にきっちり説明しておく必要があります。
また、その場合募集時の雇用形態は、正社員ではなく、有期んぼ契約社員等になります。
冒頭の問いの答えは…
『雇用契約は会社と従業員の合意で成り立つので、
労使の合意があれば、有期雇用契約とすることは可能です。
しかし、正社員として雇用することをあらかじめ約束している契約ならば、
期間の定めのない契約とみなされる可能性があります。
そのため、前提となる労働条件や運用には注意が必要です』